【獣医師解説】老犬の夜泣き対策完全ガイド|原因と今日からできる対処法

夜泣きのトップ画像

愛犬が夜中に突然鳴き始めて、眠れない夜を過ごした経験はありませんか?

「ワンワン」「クーンクーン」と夜通し鳴き続ける愛犬。
何をしても泣き止まず、近所への迷惑も心配になってしまう。

老犬の夜泣きは、多くの飼い主さんが悩む問題の一つ。

この記事では、現役獣医師が老犬の夜泣きの原因と対処法を詳しく解説します。
今日からできる対策もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

目次

老犬の夜泣きとは?

老犬の夜泣きとは、シニア期に入った犬が夜間に理由なく鳴き続ける行動のこと。

よくある鳴き方

  • 「ワンワン」と吠え続ける
  • 「クーンクーン」と鼻を鳴らす
  • 「アオーン」と遠吠えのように鳴く
  • 夜中に何度も鳴く

若い頃は夜静かに寝ていた犬が、高齢になると夜泣きを始めることがあります。
特に10歳以上のシニア犬や、認知症が進んだ犬に多く見られる症状です。

老犬が夜泣きをする原因

夜泣きには必ず原因があります。
愛犬がなぜ鳴いているのか、原因を知ることが対策の第一歩。

1. 認知機能障害

高齢犬の夜泣きでは認知機能障害(認知症)が重要な原因のひとつです。

ただし、痛みや内科疾患、視力・聴力の低下なども夜泣きの原因として多いため、まずはこれらを除外する必要があります。

人間のアルツハイマー病と同じように、犬も年を取ると脳が萎縮し、認知機能が低下します。

認知症の主な症状

  • 昼夜逆転(昼は寝て、夜起きている)
  • 同じ場所をぐるぐる回る
  • 後ろに下がれない
  • 隅のほうに行って止まる(方向転換できず動けなくなる)
  • 名前を呼んでも反応しない
  • トイレの場所を忘れる
  • 飼い主の顔を忘れる

認知症による夜泣きは、本人も不安で鳴いている状態。
叱っても効果はありません。

獣医さん

認知症の犬は「今どこにいるのか」「飼い主はどこにいるのか」が分からず、パニックになって鳴いています。
叱ると余計に不安が増してしまうので、優しく声をかけて安心させてあげてください。

2. 不安・寂しさ

老犬は不安を感じやすくなります。

不安の原因

  • 視力・聴力の低下
    目が見えにくくなったり、耳が聞こえにくくなったりすると、周囲の状況が分からず不安に。
    暗い夜はさらに不安が強まります。
  • 飼い主が見えない不安
    飼い主の姿が見えないと不安になり、鳴いて呼ぶことがあるでしょう。
  • 環境の変化
    引っ越しや家族構成の変化など、環境が変わると不安を感じやすくなります。

3. 痛みや体調不良

関節炎や椎間板ヘルニアなど、体の痛みが原因で夜泣きをすることも。

夜は気温が下がり、関節が固くなって痛みが増すことがあります。
じっと寝ていると痛む場合もあるため、夜中に鳴いて痛みを訴えているかもしれません。

また、内臓の病気や体調不良が原因のこともあります。
心臓病や腎臓病、胃腸の不調などで体が辛く、それを訴えて鳴いている可能性も。

痛みや体調不良のサイン

  • 歩き方がおかしい
  • 触ると嫌がる
  • 階段を上りたがらない
  • 寝起きに体が固い
  • 呼吸が荒い
  • 食欲がない
  • 嘔吐や下痢がある

4. トイレの失敗による不快感

老犬は膀胱のコントロールが難しくなり、トイレを失敗することが増えます。

おしっこやうんちで体が汚れて不快だと、鳴いて知らせることがあるのです。

おむつを使っている場合の注意点

どうしても失敗が多い場合、おむつをつけている犬も多いでしょう。

しかし、動物病院ではおむつかぶれで痛がる犬をよく見かけます。

おむつの中は蒸れやすく、おしっこで濡れたまま長時間つけていると、皮膚が赤くただれてしまうことに。
ひどい場合は出血したり、感染を起こすこともあります。

おむつかぶれを防ぐために
  • 頻回におむつを交換する
    おしっこをしたらすぐに取り替える
  • 清拭で皮膚を清潔・乾燥に保つ
    ぬるま湯で湿らせたタオルで優しく拭き、しっかり乾燥させる
    おしっこで尿やけ(皮膚の変色・炎症)を起こすこともあるため、定期的にシャワーで洗い流して清潔に保ちましょう
  • 皮膚が赤くなっていないかチェック
    お腹や内股が赤くなったり、痛がったりしたらすぐに受診を

おむつかぶれによる痛みが、夜泣きの原因になることもありますよ。

獣医さん

診察で「夜泣きがひどい」と来院された犬を見ると、おむつかぶれで皮膚が真っ赤になっていることがよくあります。
飼い主さんは「おむつをつけているから安心」と思っていても、実は痛くて鳴いていたというケースも。こまめなケアが大切です。

今日からできる夜泣き対策

原因が分かったら、次は具体的な対策を。

1. 寝る場所を見直す

寝る場所を変えることで、夜泣きが改善することがあります。

飼い主の近くで寝かせる

飼い主のそばで寝ることで、不安が和らぐケースは多いもの。

ベッドや布団の横に犬用ベッドを置いて、同じ部屋で寝てみてください。
飼い主の匂いや気配を感じることで、安心して眠れることがあります。

寝床の位置を変える

リビングから寝室に移動する、ケージから出してベッドで寝かせるなど、環境を変えてみましょう。
飼い主が見える位置に寝床を移動することで、安心感が増します。

2. 夜間照明をつける

視力が低下した老犬は、暗闇で不安を感じやすくなります。

薄暗い程度の間接照明をつけておくと、周囲が見えて安心できるかもしれません。

3. 昼間の運動量を増やす・脳に刺激を与える

認知症の進行を遅らせるためにも、日中の散歩や遊びは大切。

昼間に適度に疲れることで、夜ぐっすり眠れるようになることがあります。

日中の光と活動が睡眠リズムを整える

日中に光を浴びることと、規則正しい生活は睡眠リズムの維持に役立つ可能性があります。

日光を浴びると、脳内でセロトニンという物質が分泌されます。
このセロトニンが夜になるとメラトニンに変換され、自然な眠気を促してくれるのです。

メラトニンは「睡眠ホルモン」とも呼ばれ、質の良い睡眠に欠かせない存在。
日中の散歩で日光を浴び、適度に活動することが、夜の入眠を助けることにつながるでしょう。

ただし、老犬は体力が落ちているため、無理のない範囲で。
短時間の散歩を1日2〜3回に分けるのもおすすめです。

歩けるうちはサポートしながらでも歩かせる

寝たきりにならないためには、歩ける力があるうちはなるべく歩かせることが大切。

足がふらついていても、飼い主が体を支えてあげながら歩かせることで、筋肉の維持につながります。

完全に歩けなくなってしまった場合でも、立たせるだけで筋肉を使うことに。
後ろ足を支えて立たせる、ハーネスで体を支えて立位を保つなど、少しでも体を動かす機会を作りましょう。

滑り止め対策で安全に歩かせる

老犬は足腰が弱くなり、フローリングで滑りやすくなります。
滑って転倒すると、骨折や打撲のリスクも。

滑り止め靴下

  • 肉球に滑り止めがついた犬用靴下を履かせる
  • フローリングでも滑らず、安心して歩ける
  • 転倒による怪我の予防にも



 

滑り止めマット

  • 犬がよく歩く場所にマットやカーペットを敷く
  • 滑りにくくなり、関節への負担も軽減

安全な環境を整えることで、老犬も安心して歩くことができ、筋力維持につながります。

歩くことが床ずれ予防にも

筋力が維持できると、寝たきりの予防だけでなく、血行促進にもつながります。

さらに、歩くことで床ずれの予防にも効果的。

床ずれ(褥瘡)は、ずっと同じ場所に圧力がかかり続けることで起こります。
寝ている時間が長いと、肘や腰など骨が出ている部分の皮膚が圧迫され、血流が悪くなって皮膚が壊死してしまうのです。

歩く時間を増やし、寝ている時間を減らすことが床ずれ予防に直結します。
少しでも立って歩く時間を作ることが、愛犬の健康維持に役立つでしょう。

獣医さん

「もう歩けないから」と諦めずに、少しでも立たせてあげてください。
後ろ足を支えて10秒立たせるだけでも筋肉は使われるんです。

寝たきりになってからの介護は本当に大変なので、歩ける時間を1日でも長く保つことが大切ですよ。

脳への刺激も効果的

体を動かすだけでなく、脳に刺激を与えることも認知症予防につながります。

ノーズワーク(嗅覚を使った遊び)

  • おやつを隠して探させる
  • タオルの中におやつを隠して嗅ぎ分けさせる
  • 嗅覚は老犬になっても比較的衰えにくい感覚

散歩で刺激を増やす

  • いつもと違う道を歩く
  • 新しい匂いを嗅がせる
  • 他の犬や人と触れ合う機会を作る

脳を使うことで認知機能の低下を遅らせ、夜泣きの予防にもつながるのです。

5. トイレ環境を整える

寝床のすぐ近くにトイレを設置して、いつでも排泄できるようにしましょう。

ペットシーツを広めに敷いておくと、失敗しても片付けが楽になります。

トイレまでの動線を確認

老犬はわずかな段差も越えられなくなることがあります。

  • トイレトレーの縁の段差
  • 部屋の敷居
  • カーペットとフローリングの境目

これらの小さな段差が原因で、トイレに行けず失敗してしまうことも。

愛犬がトイレまで実際に歩いて行けるか、段差でつまずいていないか確認してください。
必要であれば、スロープを設置したり、段差のないフラットなトイレトレーに変更しましょう。

6. 日中の生活リズムを整える

昼夜逆転を防ぐために、日中はなるべく起こしておきましょう。

日中にたくさん寝てしまうと、夜になってさらに目が冴えてしまいます。
可能な限り昼間は起こしておくことが、夜泣き対策の重要なポイント。

具体的な方法

  • 朝はカーテンを開けて日光を浴びせる
    体内時計をリセットして、昼と夜の区別をつける
  • 昼寝は短時間にする
    長時間寝かせず、こまめに声をかけて起こす
  • 昼間に話しかけたり、遊んだりする
    名前を呼ぶ、おやつをあげる、軽く体を撫でるなど、刺激を与える
  • 日中に散歩や運動の時間を作る
    外の空気を吸うことで覚醒しやすくなる

生活リズムを整えることで、夜ぐっすり眠れるようになり、夜泣きの改善につながります。


動物病院で相談できること

夜泣きが続く場合は、動物病院に相談することも大切。

相談すべきタイミング

  • 急に夜泣きが始まった
  • 鳴き方が苦しそう
  • 痛みを伴っている可能性がある
  • 家庭での対策を試しても改善しない

診察で伝えるべき情報

  • いつから夜泣きが始まったか
  • どんな鳴き方か
  • 1日のうちいつ鳴くか
  • 他に気になる症状はあるか
  • 試した対策と効果

処方される可能性のある薬

獣医師が症状を診て、必要に応じて薬を処方することがあります。

例えば、こんなアプローチができます

  • 抗不安薬
    不安を和らげる薬
  • 入眠剤(睡眠導入剤)
    夜の入眠を助ける薬
    認知症による昼夜逆転や夜泣きに対して処方されることがある
  • サプリメント
    認知症の進行を遅らせる可能性のある栄養補助食品
  • 鎮痛剤
    痛みが原因の場合

獣医師が愛犬の状態を総合的に判断して、適切な薬を選択します。

重要: 人間用の睡眠薬や市販の薬を自己判断で与えるのは絶対にNG。
犬には危険な成分が含まれていることがあり、命に関わる事態になる可能性も。
必ず獣医師に相談してください。

獣医さん

「人間用の睡眠薬を少し飲ませたら眠ってくれるかな」と思う気持ちは分かりますが、絶対にやめてください。犬の体重や代謝は人間と全く違うため、少量でも中毒を起こすことがあります。夜泣きがつらい時こそ、動物病院に相談してください。

近所迷惑が心配な時

夜泣きが続くと、近所への迷惑も気になるもの。

防音対策

  • 窓を閉める
  • 防音カーテンをつける
  • 犬の寝床を窓から離す

ご近所への説明

事前に近所の方に事情を説明しておくと、理解が得られることもあります。

「老犬で夜泣きをすることがあり、ご迷惑をおかけするかもしれません」と一言伝えておくだけで、トラブルを避けられるでしょう。


こんな症状があればすぐに病院へ

夜泣き以外に以下の症状がある場合は、すぐに動物病院を受診してください。

  • ぐったりしている
  • 呼吸が荒い
  • 嘔吐や下痢がある
  • 痙攣を起こした
  • 体を触ると痛がる
  • 食欲がまったくない

これらは緊急性の高い症状のため、早めの受診が必要です。

獣医さん

高齢だから仕方ない。ではなく、なにか原因がある場合も。心配なことがあったら動物病院に相談してください。

介護者のケア|ノイローゼにならないために

老犬の夜泣きは、介護する飼い主さんにとっても大きな負担。

毎晩眠れない日が続くと、心身ともに疲弊してしまいます。

家族で協力する

一人で抱え込まず、家族で協力して介護しましょう。

  • 夜勤を交代制にする
  • 週末だけ家族が担当する

誰かに頼ることは、決して悪いことではありません。

休息を取る

愛犬のためにも、飼い主さん自身が元気でいることが大切。

  • 昼寝をして睡眠不足を補う
  • ペットシッターや老犬ホームの一時預かりを利用する
  • 獣医師やペット介護の専門家に相談する

「完璧にやらなくては」と思わず、できる範囲でケアすることが長く一緒にいるコツです。

獣医さん

老犬介護で疲れ果てた飼い主さんを何人も見てきました。
「自分が頑張らなきゃ」と無理をして、体調を崩してしまう方も。

薬でアプローチできることもあるので、早めに動物病院に相談してください。一人で抱え込まず、周りに助けを求めてみてはどうですか。

まとめ

老犬の夜泣きは、認知症や不安、痛みなど様々な原因があります。

まずは原因を探り、今日からできる対策を試してみてください。

  • 寝る場所を見直す
  • 夜間照明をつける
  • 昼間の運動量を増やす・日光を浴びる
  • トイレ環境を整える
  • 生活リズムを整える

現実を知っておくことも大切

正直にお伝えすると、対策をしても夜泣きが完全になくなることは難しいかもしれません。

認知症が原因の場合、年齢が上がるにつれて進行していくことがほとんど。
対策はあくまで「進行を遅らせる」「症状を和らげる」ためのものです。

それでも、少しでも夜泣きが減れば、愛犬も飼い主さんも楽になります。
できることから試してみてください。

改善が見られない場合や、症状が悪化する場合は、動物病院に相談しましょう。

そして何より、介護する飼い主さん自身も大切に。
無理せず、できる範囲でケアしていくことが、愛犬との穏やかな時間を過ごす秘訣です。

この記事が、老犬の夜泣きで悩む飼い主さんのお役に立てれば幸いです。

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この記事を書いた人

動物病院で犬・猫の診療を行っています。
ペットの日々の生活が豊かになるヒントをお届けします。

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