ペットがフローリングで滑る理由。原因と対策法5選

いつもこんなにツルツル滑ってて大丈夫かな?

気づいたら、最近よく足が滑るようになったな

そういえば最近家の中で歩かなくなったな

こんな事、大事なペットちゃんに思っていませんか?この記事でその不安が少しでも解消できれば嬉しいです。毎日診療を行っている獣医師の視点から見たペットがフローリングで滑る理由とその対策について紹介します。

目次

ペットがフローリングで滑る理由

ペットがフローリングで滑る理由はいくつかあります。

足裏の毛や爪が伸びている

動物の足の裏のパットは滑り止めも役割もしています。

爪が伸びすぎたり、足の裏の毛がのびているとパットでしっかりと踏ん張れなってしまうので要注意!

爪切りや足の裏の毛のバリカン処置など定期的なケアをしてあげてください。

急な動きや興奮

ペットがフローリングで滑る大きな原因のひとつが、急な動きや興奮状態です。

普段は問題なく歩けていても、
・急に走り出したとき
・おもちゃを追いかけたとき
・来客に興奮したとき
・インターホンに反応してダッシュしたとき

このような瞬間に「ツルッ」と滑るケースが非常に多いです。

加齢による筋力の低下

年齢を重ねると、少しずつ筋力は落ちていきます。
それは足の筋肉も同じです。

高齢のペットの足をそっと触ってみると、
「いつの間にか細くなっている…」
と感じることがあります。

筋肉が落ちると、体を支える力も弱くなります。
すると、立ち上がる・踏ん張る・歩くといった動作が少しずつ大変になっていきます。

特に注意が必要なのが、肥満傾向のある子です。
支えなければいけない体重が重いほど、足への負担は大きくなります。

筋力が落ちた足で重い体を支えるのは、とても大変なこと。
そのため、肥満のある高齢の子は、より歩きづらくなってしまう可能性があります。

獣医さん

つまり、「筋力の維持」と「体重管理」はとても大切です。

痛みや麻痺により足に力が入らない

痛みや麻痺(まひ)があると、踏ん張りたくても足にしっかり力を入れることができません。

年齢を重ねるにつれて、慢性的な関節炎や骨の変形が起こりやすくなります。そうすると、動くたびに痛みを感じるようになり、自然と足に力をかけるのを避けてしまいます。

また、椎間板ヘルニアなどの病気が原因で、足に麻痺が出てしまうこともあります。麻痺がある場合は、自分の意思とは関係なく力が入りにくくなります。

その結果、踏ん張りがきかず、フローリングの上で滑りやすくなってしまうのです。

以下のような調査があります。(参考:zoetis)

関節の病気以外で、大学病院に訪れた10歳以上の犬(524頭)の約半分が、
関節に問題があることがわかりました。またそのうちの飼主さまの半分が 犬の関節炎(変形性関節症)に気づいていなかったことがわかりました。
                    日本大学 生物資源科学部 獣医学科 枝村一弥先生 調べ

50%の飼い主が犬の関節炎にきづいていなかったという事実は、

「どうしてもっと早く気づいてあげられなかったんだろう…」
そう感じてしまう飼い主さんも少なくありません。

でも、それは決して飼い主さんがちゃんと見ていなかったからではありません。

実は、多くのわんちゃんは痛みを隠してしまうことがあるのです。

というのも、犬はもともと自然界で生きてきた動物。
弱っている姿や痛みを見せることは、外敵に狙われるリスクにつながります。

そのため、本能的に「弱みを見せない」習性が残っていると言われています。

獣医さん

少し滑りやすくなった
動きがゆっくりになった
ジャンプや段差をためらうようになった
など、そんな小さな変化が実は身体からのサインかもしれません。

そもそもの体力低下

そもそも体力が低下している状態では、足にしっかり力を入れることができません。

これは人も同じです。
体調を崩して寝込んでいるとき、立ち上がるとフラフラした経験はありませんか?
「踏ん張ろう」と思っても、体に力が入らないですよね。

わんちゃんも同じで、体力が落ちていたり、体調が優れなかったりすると、足に十分な力が入らなくなります。その結果、フローリングの上で滑りやすくなることがあります。

もし急に足に力が入らなくなったように感じたら、

✔ 元気はあるか
✔ 食欲はあるか
✔ いつも通り動けているか

まずは体調の変化がないかを確認してみてください。

獣医さん

滑りやすさの裏に、体からのサインが隠れているかもしれません。

フローリングで滑ったらどうなるのか

「ちょっと滑っているだけだから大丈夫」
そう思っていませんか?

実は、フローリングで滑る状態をそのままにしておくと、体にも心にもさまざまな影響が出てくる可能性があります。

🐾 身体への影響

■ 関節へのダメージ

小型犬に多い膝蓋骨脱臼(パテラ)は要注意です。
滑ったときに膝がねじれることで、症状がさらに悪化してしまう可能性があります。

また、膝だけでなく、ほかの関節も同様です。
滑るたびに小さなダメージが積み重なり、やがて慢性的な関節炎へと進行してしまうこともあります。

一度の大きなケガではなくても、
小さな「ツルッ」の積み重ねが関節を痛めていくのです。

■ 前十字靭帯断裂のリスク増加

強く踏ん張った瞬間に、靭帯が切れてしまうケースもあります。突然の大きなケガにつながることも少なくありません。

■ 腰痛・椎間板ヘルニアの悪化

足だけでなく、腰にも大きな負担がかかります。椎間板ヘルニアになれば、重症度によりますが、痛みだけでなく麻痺が出る場合もあります。

■ 慢性的な筋肉疲労

「すべらないように」と常に緊張した状態が続くため、筋肉が疲れやすくなります。

筋肉がつかれるだけでなく、自分の家を”こわい場所”と感じてしまっているかもしれません。

■ 寝たきりのリスク

高齢のペットでは、ケガや筋力低下をきっかけに一気に活動量が落ち、寝たきりにつながる可能性もあります。

🐾 行動や性格への影響

体への影響だけではありません。心にも変化が現れます。

■ 走らなくなる

「滑る=怖い」と学習すると、自分から走らなくなります。怖くて走れないとお家でのびのび遊ぶ機会も減っていき、活動量が少なくなります。

■ ジャンプを避けるようになる

ソファや段差をためらうようになります。

■ ストレスの増加

思うように動けないことは、大きなストレスになります。

■ 活動量低下から肥満へ

動かなくなることで体重が増え、さらに関節に負担がかかる悪循環に。

🐾 長期的に起こる悪循環

滑る

動かなくなる

筋力が低下する

さらに滑りやすくなる

このように、小さな「ツルッ」が、将来的な大きなトラブルにつながることがあります。

フローリングで滑ることは、単なるクセや年齢のせいではない場合もあります。

大切なのは、
「今は大丈夫」ではなく、
将来の足腰を守る視点で考えることです 🐾

フローリングが滑る!!対策5選

といってもフローリングを剥がすなんて簡単にはできません。

そこで、取り組みやすいフローリング対策を紹介します。

滑り止め対策をする

なんといっても、滑り止め対策は必須です。ペットの滑り止め対策にはいくつかあるので紹介します。

マットを敷く、滑りにくい床材の導入

簡単なのは、滑り止めマットの導入です。四角のパーツを敷き詰めるタイプはフローリングの様々な広さに対応できるので便利です。しかしまれに噛み癖、異食壁のある子は噛み応えが良いのか飲み込んでしまうリスクがあります。

獣医さん

実際、病院でもマットによる腸閉塞で手術した経験が何度もあります。

パーツを敷き詰めるタイプではなく、大きめのマットや絨毯で対応だと飲み込みにくいと思います。こちらは、汚れてしまった場合の掃除が大変などのデメリットがあります。

最近では滑りにくい床材などもあるので、自分のペットの性格にあったものを導入してください。

滑り止めの靴下などのサポート道具を使う

滑り止め靴下や滑り止めパットシールは、設置場所を選ばず使えるのが大きなメリットです。
フローリングの上でも、いつものお部屋でも、手軽に取り入れられる便利なアイテムです。

ただ、「装着してもすぐに取ってしまわないか心配…」というお声をよくいただきます。

確かに、若くて元気いっぱいの子は、足元の違和感が気になって外そうとしてしまうこともあります。
でも、高齢になってくると、案外気にせず使ってくれる子がほとんどです。

「気になるけど迷っている…」という方は、ぜひ一度試してみてくださいね。
愛犬の歩きやすさがぐっと変わるかもしれません。

次に滑り止め靴下と滑り止め肉球シールのメリット・デメリットを紹介します。

滑り止め靴下

メリット

  • 洗って繰り返し使える
  • 肉球の端まで滑り止めが効く

デメリット

  • 肉球ぴったりのサイズにカスタマイズできない

滑り止め肉球シール

メリット

  • ハサミで切って大きさを好きにカスタマイズ出来る

デメリット

  • 使い捨て
  • 一部分剥がれた場合でも取り替える必要あり
  • 交換時はしっかり密着しているため、剥がすときに嫌がる子もいる。
  • 足の裏の毛が伸びていると装着できない
獣医さん

滑り止め靴下は洗って繰り返し使えるので経済的です。一方、肉球シールはハサミで切って小さくできるので、ぴったりのサイズにカスタマイズできるので、靴下のサイズがない2kg以下の超小型犬さんたちにおすすめです。

急な動きや興奮への対策

急な動きや興奮で身体を痛めてしまうことって実は多いです。そうならないように事前に出来る対策について紹介します。

待てのコマンドを覚えさせる

犬のしつけの中でも、とても大切と言われているのが「待て」です。
一見シンプルなコマンドですが、実は日常生活のさまざまな場面で役立ちます。

ただし、犬がすでに興奮してしまっていると、飼い主さんの声が届きにくくなることもあります。
そのため大切なのは興奮してからではなく、興奮する前に「待て」をさせることです。

タイミングよく「待て」を使うことで、犬は少しずつ落ち着いて行動することを覚えていきます。

今回は、「待て」を覚えることで興奮をコントロールできる例を紹介します。

ケース①ご飯の前

ご飯の準備をしていると、嬉しくてジャンプしたり吠えたりする子も多いですよね。

ここで「待て」を使えると、
落ち着いて待ってからご飯をもらう習慣が身につきます。

「興奮したらもらえない、落ち着いたらもらえる」ということを理解出来るように練習できます。

ケース②散歩に行くとき

リードを見ると大興奮してしまう犬も少なくありません。

「待て」をして落ち着いてからリードをつけることで、
散歩の前に気持ちを整えることができます。

ほんの小さな習慣ですが、興奮しているときの犬の動きはとても激しいものです。
その動きを日々少しずつ抑えてあげるだけでも、体への負担を減らすことにつながりますよ。

直線への対応

家全体に滑り止め対策をするのが難しい場合は、まずは玄関やキッチンへ続く通り道だけでも対策してみてください。

例えば、パパやママが帰ってきたとき。嬉しくて玄関まで猛ダッシュしてくる子はいませんか?

また、ご飯の時間になると、キッチンに向かう飼い主さんの後を興奮しながらついてくる子も多いですよね。

とても可愛らしい行動ですが、その裏では滑りやすい床によって足腰に負担がかかっている可能性もあります。

玄関までの通り道やキッチンへ向かう動線に、滑り止めマットなどを敷いてあげるだけでも安心感が変わります。

これまで滑って怖かった場所も、安心して歩ける道に変わるかもしれません。

できるところから、ぜひ試してみてくださいね。

痛みへの対応

そもそも身体が既に痛かったらなかなか歩いてくれません。

もう高齢だから歩かないのは仕方ないか…

なんて諦めていませんか?もしかして痛みを和らげてあげたらまた歩けるようになるかもしれません。

最近では、腎臓に負担をかけない慢性関節炎用の注射もあります。

最近歩かなくなったな…

そう感じたら、動物病院に相談してみるとよいかもしれません。

毎日のお散歩

日々のお散歩って筋肉を維持するのにとても大事です。走ったり、坂道を登ったりしなくてもゆっくり歩くだけでOKです。

もう高齢で歩けないよ

という状態でも、立ってくれるだけでも筋トレになります。トイレに行くとき立つのが大変なら支えてでもいいので、少しでも筋肉を使えるように意識してみてください。

サプリメントや適切な食事を取り入れる(体重管理)

薬だけではなく、毎日の食事やサプリの活用もおすすめです。

関節のサプリや高齢用のフードの一部には身体の炎症を抑えてくれる成分が配合されていたり、筋肉の維持に必要なタンパク質が配合されています。

また、食べるものだけでなく体重管理もとても大切です。弱ってきた足腰で過剰な体重を支えるのは常に負担がかかり、歩くのがおっくうになります。歩かないことが習慣になれば筋肉はますます弱り、さらに歩くのが難しくなっていきます。

お薬だけに頼るのではなく、日々できることからケアしていきましょう。

獣医さん

体重管理は人体断裂や身体の痛み予防だけでなく身体の健康管理にはとても大切です。

ペットがフローリングで滑る理由。原因と対策まとめ

ペットがフローリングで滑る理由は様々。

  • 足裏の毛や爪が伸びている
  • 急な動きや興奮
  • 加齢による筋力の低下
  • 痛みや麻痺により足に力が入らない
  • そもそもの体力低下

対策として大切なことは次のとおり。

  • 爪や足の裏の毛の適切な処理
  • 日々の運動
  • 過度な興奮の予防
  • 滑り止めグッズ等でのサポート
  • 適切な体重管理とサプリメントの活用等での健康管理
  • 痛みがある、体調が優れない場合は動物病院へ

日々のちょっとした気づきが、健やかな毎日につながります。
大切な家族が笑顔で過ごせるように、暮らしの中に小さな工夫を取り入れてみませんか。

獣医さん

まずは出来ることからチャレンジしてみてください。

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この記事を書いた人

動物病院で犬・猫の診療を行っています。
ペットの日々の生活が豊かになるヒントをお届けします。

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