猫のフィラリア予防、していますか?
室内飼いだから大丈夫でしょ?
フィラリアって犬の病気じゃないの?
こう思っている飼い主さん、実はとても多いんです。
でも、猫もフィラリア症にかかります。 しかも犬よりずっと発見が難しく、気づいた時にはもう手遅れ……ということも珍しくありません。
この記事では猫のフィラリア症について、獣医師の視点からわかりやすく解説します。「うちは大丈夫」と思っている方にこそ、ぜひ読んでほしい内容です。
- 猫のフィラリア症とはどんな病気か
- 犬と何が違うのか
- なぜ発見が難しいのか
- 室内飼いでも予防が必要な理由
- 猫のフィラリア予防について
猫のフィラリア症とは
猫のフィラリア症は、蚊を介して感染する寄生虫の病気です。
「フィラリアは犬の病気」というイメージが強いですが、猫も同じように感染します。感染ルートも犬と同じで、フィラリアに感染した動物の血を吸った蚊が、次に猫を刺すことで感染が成立します。
猫の感染率について
古いデータですが、日本国内における猫のフィラリア感染率の調査結果があります。

1959年〜1995年の病理解剖調査では、野良猫で0.5〜9.5%、家猫で3〜5.2%にフィラリア感染が確認されています。また、1989年〜1995年の埼玉県の調査では、2歳以上の猫の4.1%で成虫感染が見られました。データは少し古いですが、感染リスクは依然として存在するとされています。

興味深いのは、感染した猫の約4割が室内飼いであり、その中でも25〜30%前後が厳密な室内飼いだったとされています。。「室内だから安全」とは言い切れないことがわかりますよね。
なぜ猫の感染率は犬より低いのか
猫のフィラリア感染率は、その地域の犬の感染率の5〜20%程度と報告されています。猫の感染率が犬より少ないのは、フィラリアの本来の宿主が犬であり、猫ではないためです。
猫は犬よりもフィラリアに対する抵抗力が強く、体内に侵入したフィラリアを排除しようと免疫が強く働きます。そのため、多くのフィラリア幼虫は成虫まで育つことができません。
しかし、この強い免疫反応こそが、猫のフィラリア症を深刻にする原因でもあります。少数のフィラリアに対しても身体が激しく反応してしまうため、犬以上に重篤な症状を引き起こすことがあるのです。
犬のフィラリア症については[こちらの記事]で詳しく解説しています。
犬と猫のフィラリア症の違い
猫のフィラリア症が特に怖い理由のひとつが、犬とはまったく異なる進み方をする点です。
| 犬 | 猫 | |
|---|---|---|
| 症状の原因 | 大量寄生による心臓病 | 少量でも身体が過剰反応 |
| 症状の出方 | じわじわ慢性的に悪化 | 無症状〜突然死まで幅がある |
| 主な寄生部位 | 心臓・肺血管 | 心臓・肺血管 |
| 気づきやすさ | 比較的気づきやすい | 非常に気づきにくい |
| 治療 | 進行度により異なる | 対症療法が中心 |
犬は大量のフィラリアが心臓や肺血管に寄生して、じわじわと心臓病が進行します。一方、猫に寄生するフィラリアは成虫まで育つのはほんの数匹のみですが、その少数でも身体が強く過剰反応してしまうため、深刻な状態に陥ることがあります。
獣医さん私が診察する九州では、毎年数頭のフィラリア症の犬を診ます。蚊がたくさんいる地域なので、同じ環境にいる猫にも当然感染リスクはあると考えています。
猫のフィラリア症の症状
猫のフィラリア症は、無症状や軽症で経過する猫もいれば、突然死することもあるなど、症状の出かたに幅があるのが特徴です。


主な症状
急性症状
- 突然の呼吸困難
- ぐったりする・虚脱
- 突然死することがある
慢性症状
- 繰り返す咳・呼吸器症状
- 繰り返す嘔吐
- 食欲不振・体重減少
- 元気がなくなる・疲れやすい
症状がほとんど出ないまま経過する猫もいる一方で、慢性的な咳や呼吸器症状が続く猫、突然状態が悪化する猫など、個体差が大きい病気です。
HARD(猫の心肺フィラリア症)について
猫のフィラリア症では「HARD(犬糸状虫随伴呼吸器疾患)」と呼ばれる状態になることがあります。フィラリアの幼虫が肺の血管に到達した際に激しい炎症反応が起き、咳・呼吸困難などの症状が現れます。
これが「猫喘息」や「気管支炎」と非常に症状が似ているため、フィラリア症と気づかれないことが多いのです。



犬は段階的に悪くなるので途中で気づいて来院してもらえることが多い。でも猫は突然状態が悪化することがあります。飼い主さんが「いつも通り元気だったのに…」と驚いて連れてくることが猫では少なくありません。
なぜ猫のフィラリア症は気づきにくいのか
猫のフィラリア症が発見しにくい理由は、大きく3つあります。


① 猫は症状を隠す動物
猫はもともと不調を隠す習性を持っています。これは野生の本能で、弱みを見せないようにするためです。
そのため、体の中に異変が起きていても、ギリギリになるまで外からは気づけないことがほとんどです。飼い主さんが「なんかおかしいな」と感じた時には、すでにかなり進行しているということも珍しくありません。
② 他の病気と症状が似ている
咳や呼吸困難は喘息や気管支炎と、繰り返す嘔吐は「この子はよく吐く子だから」と見過ごされがちです。
フィラリア症に特有の症状がなく、よくある病気との区別がつきにくいことが、発見を遅らせる大きな原因になっています。
③ 心臓病との区別が非常に難しい
猫は無症状の心筋症を持っている子が珍しくありません。フィラリア症による症状と心筋症の症状は区別がとても難しく、実際に私の病院でもフィラリア症と確定診断できた猫はいません。それだけ見つけにくい病気なんです。
猫のフィラリア症の診断
猫のフィラリアの寄生数は非常に少ないため、血液検査だけで確定診断できないことも多く、複数の検査を組み合わせて総合的に判断します。
血液検査(抗原検査・抗体検査)に加えて、レントゲンや超音波検査も組み合わせて診断します。



猫のフィラリア症は単独の検査で確定が難しく、抗原検査・抗体検査・画像検査などを組み合わせて総合的に判断します。。検査が陰性だからといって、感染していないとは言い切れません。だからこそ、予防が本当に大事な病気なんです。
室内飼いでも猫のフィラリア予防が必要な理由
「うちは完全室内飼いだから大丈夫!」
そう思っていませんか?
実は、室内飼いだからといってリスクがゼロになるわけではありません。
蚊が室内に侵入する経路
室内の猫も感染しているということは、室内の猫も蚊に刺されているということです。蚊は思っている以上に簡単に家の中に入ってきます。


蚊の侵入経路
- 窓や玄関の開閉時に一緒に入ってくる
- 網戸の小さな破れや隙間から侵入
- ベランダや庭先から洗濯物や人にくっついて家に入る
- エアコンの室外機周辺から侵入することも
- 人が外から帰ってきた時に服にくっついて入ってくる
よくあるシーン
- 宅配便の受け取りで玄関を開けた瞬間
- 夏の夜、涼しい風を入れようと窓を開けた時
- ベランダで洗濯物を干している間
- ペットボトルなどを玄関先に出した時(蚊の発生源になることも)
私たち人間でも、「家の中なのになぜか蚊がいる…」という経験がありますよね。それと同じことが猫にも起きているのです。



実際に、ほとんど外に出ない犬がフィラリア症にかかったケースを診たことがあります。私たちでも家の中で蚊に刺されることがあるように、室内飼いだからリスクがゼロとは言い切れません。室内猫だからこそ、予防で守ってあげてほしいんです。
猫のフィラリア予防について
フィラリア症は、**予防薬を使えば高い確率で防ぐことができます。**かかってしまったら対症療法が中心になるからこそ、予防が最も重要な対策です。
猫のフィラリア予防薬は動物病院で処方されます。背中に垂らすスポットタイプが主流で、月1回使うことで体内に入ったフィラリアの幼虫を駆除できますよ。
予防期間について
フィラリアは蚊が媒介するため、猫の予防期間は犬と同じ考え方です。多くの地域では蚊が活動を始める春(4〜5月頃)から、蚊がいなくなった翌月(11〜12月頃)までが予防期間の目安です。


予防薬は、投与する前にすでに体内へ侵入していたフィラリアの幼虫にも効果を示します。ただし、幼虫が成長するにつれて薬が効きにくくなるため、**毎月欠かさず使い続けることが重要**です。万が一飲み忘れてしまった場合は、自己判断でそのまま続けるのではなく、まずはかかりつけの動物病院に相談してください。


ただし、地域によって蚊の活動時期は異なります。九州など温暖な地域では蚊のシーズンが長くなりますので、かかりつけの動物病院に予防開始・終了の時期を確認してみてください。
予防薬については、かかりつけの動物病院に相談してみてください。猫の生活環境や体質に合った薬を選んでもらえます。



予防薬は毎月欠かさず使い続けることが大切です。途中でやめてしまうと感染リスクが生じます。毎年の健診と合わせて、継続して予防してあげてください。
まとめ:猫のフィラリア症
- 猫もフィラリア症にかかる
- 無症状から突然死まで症状の出方に幅がある
- 犬より気づきにくく、発見が遅れやすい
- 室内飼いでもリスクはゼロではない
- 予防が最も重要な対策
- 予防薬は動物病院で処方されたものを毎月継続して使うことが大切
- 予防薬の選択や時期については、かかりつけの動物病院に相談してください
フィラリア症は、しっかり予防すれば防げる病気です。毎年の健診と合わせて、愛猫を守る習慣をつけてあげてください。








